英語を実践的に使えるようになるためには、私が学生のときに行っていた学習の仕方ではダメで、新たな学習の仕方が必要なようです。そこで、英語の学習について検討します。
参考にした書籍
英語の学習を検討するに当たり、次の書籍を参考にしました。
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村上式シンプル英語勉強法
村上憲郎(米グーグル副社長兼日本法人社長) ダイヤモンド社 2008年7月31日発行
感想: 読む、聞く、書く、話す、語彙の各要素に満遍なく触れている点と、勉強量を数値で示してくれている点がよい。しかし、本書に記載された勉強法はほぼスパルタ式で、実践は難しそうです。
お薦め度★★★★☆
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「達人」の英語学習法
竹内理(関西大学大学院外国語教育学研究科教授) 草思社 2007年11月30日発行
感想: 後半は、読む、聞く、書く、話す、語彙、文法の各要素を手短に説明していてよい。しかし、前半の第二外国語習得研究に関する話は退屈です(なお、第二外国語習得研究については「外国語学習の科学」に詳しく紹介されています)。
お薦め度★★★☆☆
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えいごのつぼ
関谷英里子(通訳者;NHKラジオ入門ビジネス英語講師) 中経出版 2011年2月25日発行
感想: 読む、聞く、書く、話す、語彙、文法の各要素が平易に述べられていますが、平易すぎます。
お薦め度★☆☆☆☆
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残念な人の英語勉強法
山崎将志(ビジネスコンサルタント),Dean R. Rogers(英会話学校の経営者) 幻冬舎 2011年2月10日発行
感想: 語彙の学習方法として有意義な方法が紹介されています。また、発音が重視されており、詳しく説明されています。しかしながら、読む、聞くに関し、有意義な情報が得られませんでした。
お薦め度★★☆☆☆
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日本人が「英語をモノにする」一番確実な勉強法
藤沢晃治(コミュニケーション研究家、元ソフトウェア・エンジニア) 知的生きかた文庫 2007年3月10日発行
感想: 語の発音と、話すための英作文を重視しています。後半には豊富な教材ガイドがあります。生真面目な理系人間っぽさが感じ取れる親しみやすい書です。
お薦め度★★☆☆☆
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不可能を可能にする最強の英語勉強法
石井辰哉(TOEIC TOEFL 英検専門学校講師) PHP文庫 2010年1月22日発行
感想: すごく具体的にかつ網羅的に書かれていて読むのがたいへんですが、自分にあった実践方法を探し出すにはよい資料になります。ディクテーションやシャドウイングについて詳しく述べられている点がよい。
お薦め度★★★☆☆
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英語と日本語のあいだ
菅原克也(東京大学大学院総合文化研究科教授) 講談社現代新書 2011年1月20日発行
感想: 本書は英語学習のHow-to本ではないですが、英語を読む学習の方法がきわめて詳しい。
お薦め度★★★★☆
英語学習を検討するための観点
英語の学習を検討するに当たり、英語の学習について次の2つの観点から分析しました。
- 学習内容:何を学習するのか?
- 学習方法:どのように、どの程度学習するのか?
学習内容の分類
英語学習の大きな目的は、英語を使えるようになることです。英語を使うとは、英語を読む、聞く、書く、話すです。
英語を読む、聞く、書く、話すことができるようになるために、語彙を増やすこと、文法を知ること、英語音声を正しく聞き分けること、正しく発音することが必要です。
語彙を増やすに当たり、語の意味を覚えるほか、語の発音やアクセントを覚えることも必要です。
文法は、文の構造を認識するための手段です。
英語音声を正しく聞き分けるためには、日本語にない音声を把握し、または音の脱落を察知するなどの耳の身体的な能力を鍛える必要があります。
正しく発音するには、唇、舌、息をコントロールして正しく英語音声を作り出す身体能力を鍛えなければなりません。
読む
「読む」についてのキーワードは次のとおりです(菅原氏)。
- 精読:内容をしっかり理解して読む。
- 速読:理解の有無にかかわらず戻らず止まらず読み続ける。
- 多読:多量の英文を読みまくる。
- 音読:声に出して読む。
※なお、ここでの「速読」とは、斜め読みの意味ではありません。読む速度は普通の速度です。
まず、精読と速読について、村上氏、関谷氏は速読のみを紹介しています。竹内氏は初期は精読、後期は速読をすべきと述べています。菅原氏は、難しい英文の精読と易しい英文の速読の双方を行うことが有効であると述べています。
多読についてはほぼ全員一致でその有効性を述べています(村上氏、竹内氏、関谷氏、藤原氏、菅原氏)。
音読については竹内氏、菅原氏がその有効性を述べています。
聞く(+英語音声を正しく聞き分ける)
「聞く」の能力は、概ね次の3つの能力に分けることができそうです。
- 英文を速読(直読直解)する力
- 語の発音・アクセントを認識する力
- 英語音声を聞き分ける身体的な耳の力
「1」は「読む」の能力と重なり、「2」は語彙力の一部です。「3」は「聞く」に独特な能力です。
「1」を重視すると、速読可能な易し英文を聞く学習方法がよいようです(竹内氏)。
「2」や「3」を重視すると、速読困難な難しい英文を聞く学習方法がよいようです(村上氏)。
聞く学習を行う際には英文を見てはならないという意見が多数意見です(関谷氏を除く著者)。関谷氏は日本語訳を読んで内容を理解してから聞くのもよいと述べています。
書く
「書く」については、英借文でカバーせよとのことです(村上氏、竹内氏、関谷氏)。
話す(+正しく発音する)
「話す」についての学習事項は概ね次のとおりです。
- 典型構文・会話フレーズを暗記する。
- 自己紹介の英文を作成し、暗記しておく。
- 関心事を英語で言えるようにしておく。
- 正しく発音するための身体的能力を鍛える。
もっとも、「4」については、山崎氏を除き、いずれの著者も軽視しています。例えば、山崎氏を除く各著者は、rice と liceとを言い分けられなくても相手は分かってくれるといった考え方です。一方、山崎氏は、これでは外国人からの信頼は得られないと述べています。
また、「4」について、アルファベットおよび1から10までの数字を発音する練習を繰り返し行うのがよいようです(村上氏、山崎氏)。
「話す」ためには、「話す」英文を書けるようにしなければなりません(藤原氏)。
語彙を増やす
語彙については、村上氏を除き、すべての著者が、単語をフレーズや文章と共に覚えることをすすめています。単語をフレーズや文章と共に覚えるメリットは、単語の使い方を覚えることができる点と、忘れにくくすることができる点です。
竹内氏は、単語を覚える方法として、次のものをあげています。
- 文脈化:例文に埋め込んで覚える。
- 音声化:音声を介在させながら覚える。
- 身体化:動作を伴わせる(紙に書くなど)。
- ネットワーク化:同意語・派生語を一緒にして覚える。
- リスト化:テーマごとに単語をまとめて覚える。
覚える作業の反復は必要不可欠とのことです(すべての著者)。
村上氏は、竹内氏のような単語を覚える積極的な作業をせず、1万語を毎日ひたすら眺めればよいと述べています。つまり、1万語をそれぞれきわめて短時間で毎日反復するという学習方法のようです。
文法を知る
文法について厚く説明している著者はいませんでした。関谷氏は主語と述語がわかればよいといい、村上氏は中学校の教科書を読めといいます。藤原氏も中学校・高等学校の文法の復習をすすめています。基本的な文法は当然に必要だが、基本を超えた文法は重要ではないということでしょうか。また、基本的な文法の学習方法は従来の方法で十分であるということかもしれません。
学習方法
☆どの程度学習すればよいか
- 読む量:300万語、小説なら30冊、ノンフィクションなら15冊(村上氏); ペーパーブックを1ヶ月に2,3冊(竹内氏)
- 語彙量:1万語(山崎氏、村上氏)、7000語(藤原氏)
- 聞く量:1000時間聞く。毎日1時間聞いて3年間(村上氏)。
☆どのように学習すればよいか
- 毎日やる(竹内氏、村上氏)。
- 一方、毎日1時間やるよりも3日に1回3時間やった方がよいとの意見も(山崎氏)。
- ときには1日中英語を勉強する日をつくる(竹内氏)。
- 目的(大きくて抽象的なもの)・目標(小刻みで具体的なもの)を設定して計画を立てる(竹内氏)。
☆具体的な実践方法(1):ディクテーション
- 英文を聞いてそのまま書き写す練習のことです。
- 英文を完璧に聞き取れるようにするための練習です。
- 英文を書く作業は、正しく聞き取れたことを確認するために行います。
- 3文程度の少ない英文を何度も聞いて完璧に聞き取るようにすることがポイントです。
- ディクテーション用の教材があります。
☆具体的な実践方法(2):シャドウイング
- 英文を聞ききながら、追うように自ら発声してリピートする練習のことです。
- 英文を聞き終えてからリピートするのではありません。英文が聞こえたら直ちにリピートを開始します。
- 英文を1回聞いただけで瞬時に把握すると共に、発音、リズム、イントネーション、スピード、ポーズに慣れる練習です。
☆具体的な実践方法(3):センテンスリピート
- 1~数文を聞き終えた後、テキストを見ずに自ら発声してリピートする練習のことです。
- 文の構造を考えつつ英文を聞き取る練習です。
☆具体的な実践方法(4):センテンストランスレーション
- 1~数文を聞き終えた語、日本語訳を述べる練習のことです。
- 英文の内容を理解する練習です。
☆TOEICについて
- TOEIC 730点は高校3年生までに習得した英語力で達成することができる。TOEIC 730点は3ヶ月~1年で達成すべきである(山崎氏)。